Shohei Daily Lab

防御率 0.82 は、何位なのか。大谷さんの9登板を、4つの物差しで測り直す

2026/5/28


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今日も海外メディアからひとつ、大谷さんの記事を読み解いてみたいと思います。

— meimei 🐰


5月28日、ロッキーズ戦で大谷翔平が6回ノーヒット7奪三振、さらに先頭打者本塁打。DodgerBlue の Matt Borelli 記者が 《Shohei Ohtani Makes MLB History As Hitter & Pitcher In Dodgers' Win Over Rockies》 で並べた数字を読み直すと、「歴史的」という一言では足りないことが見えてきます。

「球団史最低」だけで終わらせていいのか

シーズン防御率 0.82。この数字をどう受け止めるかで、記事全体の温度がかなり変わります。

Borelli 記者がまず置いたのは、ドジャース球団史の物差しでした。先発投手の最初の9登板時点で、これより低い防御率を記録した投手はいない。これまでの記録は フェルナンド・バレンズエラの 0.91(1981年)。Fernandomania の年、新人王と Cy Young を同時に獲った、あの伝説のシーズンの数字です。それを大谷さんは今、0.09 ポイント下回っている。

ここで終われば「球団記録更新」というニュースですが、Borelli 記者はさらに3つの物差しを重ねてきます。

物差し

大谷さんの位置

上にいる投手

ドジャース球団史(先発9登板時点)

1位

ライブボール時代以降(1920〜)の MLB

3位タイ

deGrom 0.62 / マリシャル 0.69

自責点が公式化された 1913年以降の「6月入り時点」(50回以上)

9位

直近の比較対象

Grienke 2009年と同値(0.91 を更新)

物差しを4本並べたとき、面白いのは 「どの軸で切っても、歴史の上位に顔を出す」 ことです。100年単位の長尺で見ても9番目、ライブボール時代という近代的な基準で見ても3位タイ。1試合の好投を切り取った数字ではなく、9試合分の積み重ねでこの位置にいる。

自前データ(2026 直近累計)

投球回

55

ERA

0.82

打席

241 / HR 9 / OPS .882

打席数 241 で OPS .882 を維持しながら、投球回 55 で防御率 0.82。二刀流であることが、この数字の異常さに最後の補助線を引いているのだと思います。

四球4つの「荒れた快投」を、どう評価するか

ただ、Borelli 記者は手放しの礼賛をしません。この日の大谷さんは シーズン最多となる4四球を出し、4回表にロッキーズに唯一の得点を許しています。

"I like where he's at. I think tonight, after the homer, he's pitching, still kind of grinding through the outing, I don't think he put forth his best effort as far as discipline."

「今の彼の状態は気に入っている。今夜はホームランの後に投げていて、登板を耐え抜くような感じだった。規律という意味では、ベストの内容ではなかったと思う」 — デーブ・ロバーツ監督

監督の言葉は、投球と打撃の両方に向けられています。3-2 から低めのボール球を見送れば四球だった場面、カウント有利でゴロに倒れた場面――打席内容の「ちょっとした崩れ」をロバーツ監督は具体的に挙げました。

ここに、この日の試合の小さな矛盾があります。6回ノーヒットという結果と、シーズン最多の4四球という過程。ノーヒットだけ切り取れば完璧に見え、四球数だけ切り取れば「らしくない」と読める。31歳の大谷さんが投打を同じ夜に背負ったうえで残したのが、この「荒れた快投」でした。

それでも結果として、自責点1。防御率は 0.82 まで下がった。過程の乱れを、結果が吸収してしまう ――この耐性こそが、9登板を通じて 0.82 を維持している正体なのかもしれません。

1959年のドライスデールが、6月の夜に隣に立っていた

物差しがもう一本あります。打者としての物差しです。

大谷さんはこの試合、初回に先頭打者本塁打を放ちました。今季4本目、通算28本目。ドジャース球団のリードオフ本塁打通算ランキングで、Joc Pederson の 22本を抜き、デイビー・ロペスの 28本に並んで単独3位(トップは Mookie Betts の 32本)。

ただ、この数字以上に重いのは別の記録です。

MLB史上、連続する登板試合で先頭打者本塁打を放った先発投手は、大谷さんだけ。前回は5月20日のパドレス戦。2試合連続で「自分の登板の日に、自分で初回に点を取る」という芸当を、史上誰もやったことがなかった。

そして、もうひとつ。6回以上ノーヒットに抑えながら同じ試合で本塁打を放ったドジャース投手は、1959年6月25日のドン・ドライスデール以来。Borelli 記者が挙げたこの一行は、地味に見えて重い系譜接続です。バレンズエラ、ドライスデール、そして大谷さん。ドジャースの投手の歴史に、3つの名前が縦に並んでいます。

"But I think in general, in the last few weeks, he's in a good spot."

「ただ全体としてここ数週間は、彼は良い状態にあると思う」 — デーブ・ロバーツ監督 / DodgerBlue

監督が「good spot」と呼んだのは、防御率 0.82 や球団記録のことではなく、4四球を出しながらも6回をノーヒットで終え、登板の日に自分で先制弾を打てる、その全体の手触りのことだったのだと思います。Borelli 記者の記事は、その手触りを4本の物差しで言語化してみせた一夜の記録でした。

さて、今日の読み解きはここまで。
続きはまた、明日の数字が教えてくれるはずです。