Shohei Daily Lab

9月の大谷さんには、敵がいない?! — ドジャース日程表が示す最終盤の追い風

2026/8/15

大谷翔平

この記事は約 6 分で読めます。


まず、次の表を見てください。9月のドジャースの対戦相手です。

2026年9月 ドジャースの対戦カード(全25試合・勝率は8月14日時点)

相手試合数勝率立ち位置判定
カージナルス3.500WC差 3.5ノンコンテンダー
ナショナルズ3.484WC差 5.5ノンコンテンダー
レッズ7.488WC差 5.0ノンコンテンダー
マーリンズ3.504WC差 3.0コンテンダー(境界線上)
ジャイアンツ6.410WC差 14.5ノンコンテンダー
パドレス3.537WC圏内コンテンダー

カージナルス、ナショナルズ、レッズ、マーリンズ、ジャイアンツ、そしてパドレス。25試合。この中で、8月14日時点の勝率が.540を超えるチームは、ひとつもありません。プレーオフを争う立場の相手も、ワイルドカード圏内のパドレスと、境界線上のマーリンズだけ。

過去2年、9月の「相手チームの質」は成績をどう分けたか

2024年と2025年の9月を、相手がコンテンダー(優勝・プレーオフを争うチーム)だったかどうかで分けてみます。定義は「9月1日時点で地区首位、またはワイルドカード3ゲーム差以内かつ勝率5割以上」としました。

大谷翔平 9月の相手別成績(2024+2025年合算)

区分打席数被Stuff+Stuff+90以下三振率HRSLGwOBA
9月 vs コンテンダー8999.315.6%28.1%6.649.461
9月 vs ノンコンテンダー14396.524.5%21.7%14.821.539
4〜8月 vs コンテンダー49099.616.0%24.9%32.561.402
4〜8月 vs ノンコンテンダー71598.119.4%23.8%56.648.444

差は、はっきり出ています。コンテンダー相手の長打率.649に対し、ノンコンテンダー相手には.821。wOBAで.461対.539。ホームランは89打席で6本に対し、143打席で14本です。

違うのは、球の質

うちのサイトで使用しているStuff+(球速・変化量など球の物理性能だけを評価する指標。リーグ平均=100)で、大谷さんが9月に打席で受けた全球を採点してみました。

コンテンダーの投手が9月に投げてきた球はStuff+平均99.3。ノンコンテンダーは96.5。約3ポイントの差です。シーズン中(4〜8月)の差は1.5ポイントなので、9月に差が開きます

分布を見ると、もっとはっきりします。Stuff+90以下——リーグ平均からワンランク落ちる球——の割合が、9月のノンコンテンダー戦では24.5%(シーズン中は19.4%)。9月、優勝争いから離れたチームのマウンドには、拡張ロースターで昇格した若手や、来季を見据えた試験登板が増えます。これまでのようにブルペンの勝ちパターンをぶつけてくること自体が無くなります。

一方のコンテンダーは、逆にギアを上げてきます。大谷さんの三振率は、シーズン中の24.9%から9月は28.1%へ。これが過去2年の9月のシチュエーションでした。

そして今年の9月は?

今年の9月には、この「コンテンダー側」が、ほとんどいません。

つまり、被Stuff+平均以下のシチュエーション——過去2年、大谷さんが長打率.821を残してきた環境——が、9月のほとんどを占めることになります。もちろん野球はそう単純ではありませんが、少なくとも日程の上では、打撃成績が上がっていくことを期待できる1ヶ月です。

※ 唯一の例外がパドレスです(9/22-24)。毎年因縁の相手ではあるのですが、今年もワイルドカード圏内で、9月下旬の3連戦はおそらく順位が懸かっています。この3連戦だけは、色々な意味で要注意です。

そしてこの日程は、打席だけの話ではありません。もし9月に投手・大谷さんのリハビリ登板が実現すれば(MVP考察の後編で「条件②」に挙げた話です)、復帰のマウンドで対戦する打線も、同じ日程表の中にあります。優勝を争うチームの本気の打線と当たることなく、投球の感覚と球数を段階的に積み上げていける9月は、復帰登板の環境としても悪くありません。

同じ9月、もう一人のMVP候補の相手チームは?

ここで、MVPレースのもう一人の主役、カブスのピート・クロウ=アームストロング(PCA)の9月を見てみます。

2026年9月 カブスの対戦カード(全24試合・勝率は8月14日時点)

相手試合数勝率立ち位置判定
ブルワーズ6.610地区首位(カブスと3差)コンテンダー
マーリンズ6.504WC差 3.0コンテンダー
パイレーツ3.484WC差 5.5ノンコンテンダー
ブレーブス3.598地区首位コンテンダー
レッズ3.488WC差 5.0ノンコンテンダー
レッドソックス3.533WC圏内コンテンダー

逆にカブスはコンテンダーとの対戦が、24試合中18試合。勝率.540超の強豪とは、地区首位ブルワーズ(.610)との直接対決6試合を筆頭に、ブレーブス3、計9試合あります。カブスはワイルドカードには7ゲーム差の余裕がありますが、ブルワーズとは3ゲーム差。9月の争点は地区優勝で、その相手との6試合は、間違いなく双方がベストの投手を立ててくる試合です。

PCAにとっては、タフな日程に見えます。ただ、見方を変えれば——MVPを狙う選手にとって、これほど真価が問われる日程もありません。本気の強豪を相手に残す数字は、同じ1本でも重く、投票する記者の印象にも強く残るはずです。

地区優勝を懸けた9月を戦えること自体、選手として幸福なことですし、大きな舞台でこそ集中力が高まるタイプの選手もいます。

※ 実際に大谷さんは2025年9月、フィリーズとマリナーズを相手に浴びた球は平均Stuff+101.7と9月ではもっとも強いものでしたが、そこで長打率.900を残しました(23打席のスモールサンプルですが)。

レースの最終盤へ

MVPレースという視点で見るなら、二人が走る9月のコースは、まったくの別物です。大谷さんには、数字を積み上げやすい追い風の1ヶ月。PCAには、地区優勝を懸けて強豪と真っ向からぶつかる、いちばん濃い1ヶ月。

この違いが本当に効いてくるのは、MVPレースが大接戦になった時だと思います。9月に入っても二人がそこまで競り合っていること——まずはそれを期待したいと思います。

※ 数字はすべてStatcast(2024-2026年)とMLB公式APIからの自前集計です。コンテンダー判定は各年9月1日(2026年は8月14日)時点の順位に基づき、順位・勝率は9月に向けて変わる可能性があります。Stuff+は球速・変化量・リリース等の物理情報から自前モデルで算出した球質指標で、2026年のリーグ全投球を100とする相対値です。9月の分割成績は89〜143打席の小標本を含み、傾向として提示しています。

編集 @shoheidailylab


関連記事

🎯 大谷さんは、どう攻められているか

リーグは大谷さんをどう攻めるのか。試合ごとの配球・コース・スイングを、独自のAttack Mapで可視化しています。

Attack Map を見る →