サイヤング賞を逃した史上最高のERA — 1.60でも勝てなかった男
2026/5/26
⏱この記事は約 4 分で読めます。
「防御率が一番いい投手が Cy Young 賞を獲る」とは限りません。 その象徴的な例が、1968年の Luis Tiant です。
Luis Tiant, circa April 1965. Source: The Sporting News Archives / Wikimedia Commons (public domain).彼はその年に ERA 1.60 を記録しました。 それでも Cy Young 賞のトロフィーを手にしたのは、 別の投手でした。
1968年 — "Year of the Pitcher" の裏側
1968年は、メジャーリーグ史上でも投手が最も支配的だった年のひとつとして知られています。 Bob Gibson が 1.12 ERA という歴史的な数字を残した年でもあります。
その一方で、アメリカンリーグにももうひとり、圧倒的な成績を残した投手がいました。 クリーブランド・インディアンズの Luis Tiant です。
Luis Tiant (CLE) の成績
- 21勝 9敗
- 1.60 ERA
- 258.1 投球回
- 264 奪三振
- 19 完投
Denny McLain (DET) — 受賞者の成績
- 31勝 6敗
- 1.96 ERA
- 336.0 投球回
- 280 奪三振
- 28 完投
- AL MVP 同時受賞
なぜ Tiant は負けたのか
ERA だけを見ると Tiant ですが、シーズン全体のボリュームとインパクトでは McLain に分がありました。31勝 という数字は、現代ではなかなか想像しづらい規模です。 336イニングを投げ、MVP も同時に獲得した McLain のシーズンは、 当時の投票者にとって「時代を象徴する成績」だったのだと思います。
今の感覚で見れば、Tiant を推したくなる方も多いかもしれません。 ただ、当時の投票基準は「勝利数 × イニング量 × チーム貢献」に大きく寄っていました。 そのため、Tiant の 1.60 ERA は、今ほど強く評価されにくい形で受け止められたようです。
ERA 1.59 以下なら受賞率 100%
Cy Young 賞が創設された1956年以降で、 規定投球回に到達しながら受賞を逃した最低 ERA は、 前述の Tiant の 1.60 です。
逆に言うと、1.59 以下で規定到達した投手は、全員が Cy Young を受賞しています。
- Bob Gibson (1968, 1.12)
- Dwight Gooden (1985, 1.53)
- Greg Maddux (1994, 1.56)
3名で、例外はありません。ERA 1.59 というラインは、 歴史的に見ると「Cy Young 確定ライン」にかなり近い数字だと言えそうです。
Cy Young 未受賞 ERA Top 10
1956年以降、規定投球回到達シーズンに限定しています。
| # | 投手 | 年 | LG | 所属 | ERA | 受賞者 |
|---|
| 1 | Luis Tiant | 1968 | AL | CLE | 1.60 | Denny McLain |
| 2 | Zack Greinke | 2015 | NL | LAD | 1.66 | Jake Arrieta |
| 3 | Nolan Ryan | 1981 | NL | HOU | 1.69 | Fernando Valenzuela |
| 4 | Sandy Koufax | 1964 | MLB | LAD | 1.74 | Dean Chance |
| 5 | Tom Seaver | 1971 | NL | NYM | 1.76 | Ferguson Jenkins |
| 6 | Sam McDowell | 1968 | AL | CLE | 1.81 | Denny McLain |
| 7 | Phil Niekro | 1967 | NL | ATL | 1.87 | Mike McCormick |
| 8 | Roger Clemens | 2005 | NL | HOU | 1.87 | Chris Carpenter |
| 9 | Joe Horlen | 1964 | MLB | CHW | 1.88 | Dean Chance |
| 10 | Kevin Brown | 1996 | NL | FLA | 1.89 | John Smoltz |
2026年 — 大谷翔平は今どの位置にいるのか
2026年シーズン、大谷翔平の ERA は歴史的な水準で推移しています。 もしこのペースが続けば、ERA 面では「Cy Young 確定ライン」に入ってくる可能性があります。
ただし、歴史が教えてくれるのは、ERA だけでは決まらないということです。 投球回の積み上げ、WAR、そしてライバルとの相対評価。 Tiant が 1.60 で受賞を逃したように、数字の「良さ」だけでは届かないケースもあります。
当ラボの Cy Young Heat Check では、これらの要素を総合スコア化して毎日追跡しています。 ERA だけでなく、WAR・WHIP・奪三振・イニング・勝利を重み付けした指標で、 今の「レース順位」を可視化しています。
大谷翔平のいまのリアルな評価を、ぜひご確認ください。
📊 Cy Young Heat Check を見る
NL サイヤング賞レースを毎日自動更新しています。ERA・WAR・WHIP・K・IP・W を 総合スコア化して順位付けしています。
Heat Check を見る →編集 @shoheidailylab
データ出典: FanGraphs Major League Pitching Leaders, Baseball-Reference, Wikipedia Cy Young Award